
こんにちは。具です。
先日、東京・御茶ノ水で開催された「SRHセミナー」を受講してきました。
「SRHセミナー(指導者のための避妊と性感染症予防セミナー)」とは、日本家族計画協会が開催する、医師・看護師・保健師・養護教諭などの指導者を対象に、避妊や性感染症、SRHR(性と生殖に関する健康と権利)などの最新知見を学び、地域での相談・指導に活かすことを目的として、毎年全国各地で開催されている専門セミナー。
私は保健室で性に関する相談を受けることが日常的にありますが、昔は指導や説明が苦手でした。経験を重ねるにつれ、「今の自分の知識で、十分だろうか」「苦手な性教育をもっと自信を持ってできるようになりたい!」と考えるようになり、定期的に受講するようにしています。
今回は、SRHセミナーで学んだことや、これから養護教諭としてどのように仕事で活かしていくかについて考えてみたいと思います。
📱受講のきっかけは「思春期保健相談士」
そもそもこのセミナーを知ったきっかけは、SNSを通じて見つけた「性教育コミュニティ」で「思春期保健相談士」という民間資格を知ったこと。
あくまで民間資格なので、直接給与アップにつながるなどといった影響はありませんが、どうせ受けるなら、資格もいっしょに取っちゃおう!ということで、2021年に取得したのです。
✏️SRHセミナーで学んだ3つのこと
SRHセミナーでは、いつも性教育の最新情報を学ぶことができるので、思春期保健相談士の取得以降、ほぼ毎年参加するようになりました。今年は性教育をグローバルな視点から見る大変良い機会でした。
性教育は政治的な影響を受けやすい
日本はまだ、SRHR(性と生殖に関する健康と権利)の概念が浸透しておらず、学習指導要領にも反映されていないため、先進国でありながら、性教育は遅れがち…とりわけ、政治的立ち位置にすごく影響を受けやすいということをあらためて痛感しました。
たとえば、アメリカの大統領が、共和党になるか、民主党になるかで、中絶の権利やセクシュアルマイノリティの権利がはく奪されてしまう現状を学びました。人が人として幸せに生きていくという当たり前の権利が、政治によって左右されることに強い違和感と憤りを覚えつつ、だからこそ、いつの時代も「生きる権利」を叫び続ける人たちがいるのだということを忘れてはならないと感じました。
私もセクシュアルマイノリティのひとりです。自分やパートナーが幸せに生きる権利をこれからも叫び、生きやすい社会ができるようアクションを起こし続けていきます。
加害の視点から見る性暴力
性暴力にかぎらず、暴力を“臨床”をベースに、“加害”の視点から学ぶ機会がほとんどなかったこともあり、セミナーの中でもっとも楽しみにしていた講義で、ペンを走らせる手が止まりませんでした。
- 加害行為を分解して見ていくと、実は6歳・10歳と、かなり低年齢の段階から兆候がみられるということ。
- 「包括的性教育」が、性暴力を減らすことに大きく貢献できる可能性があるということ。
- 加害行為に対して「反省」に意味はなく、「行動変容」を求めるケアやプログラムが必要であること。
講義を聞きながら、加害者プログラムが非常に少ないことが気がかりでした。加害者への根本的なアプローチが、もっと全国的に普及することを心から願いつつ、先生が「きついですよ」と言っていた臨床の現場にすごく興味がわきました。
学校にいると、加害行為に対して反省をうながす場面が少なくありません。反省させることではなく、行動変容をうながすことに視点を置き、教育現場で還元できるようにしたいです。
緊急避妊薬へのアクセスの課題
講義の中で「緊急避妊薬のOTC化はゴールではなくスタート」という言葉が印象に残っています。今年の2月より、薬局やドラッグストアで緊急避妊薬を購入できるようになりました。
OTC化の実現は非常に大きな一歩ではある一方で、課題も残っていることがわかりました。たとえば、
- 学生が購入するには、価格が高い。
- 店舗の営業日や営業時間によっては、服用までに時間を要する場合がある。
- プライバシーを確保するためのスペースが十分に足りていない。
緊急避妊が必要となったときの間口がひろがったことは大きな成果であることは大前提ですが、やはり価格やアクセス面で課題があることは、これからも改善にむけてリアクションを起こす必要があると感じました。
🏫セミナーでの学びを学校にどう活かすか
日常の保健指導で活かす
いちばんはやっぱり、「日常の保健指導」で活かすこと。性の悩みにおいては、特に「生理」に関する相談がダントツで1位。
婦人科って…あの変なイスに座るのちょっとイヤで…
イスに座っての診察は内診っていうんだけど、内診は基本しないよ、大丈夫。本当に重い病気がありそうなときは内診することもあるけど、その場合はちゃんとお医者さんから説明と同意を求められるから、内診は絶対されるものじゃないんだよ。
あ、そうなんだ。よかった…安心した。
未だにドクターレベルの知識とはもちろんいきませんが、少なくとも、中学生が抱える不安や悩みに対しては、自信を持って、そしてエビデンスに基づいて説明できるようになりました。
授業に活かす
教科の保健体育や学活ーー年に何度か、いっしょに授業をさせていただく機会があります(授業へ参画するかどうかは、養護教諭によってスタンスがちがいます)。
特に教科の授業の場合は、学習指導要領に基づいて、ある程度は授業の流れや教える内容が決まっているので、養護教諭の専門性をどう盛り込むかを、教科担当の先生と事前に打ち合わせて進めます。
【実際の授業実践について書いた記事はこちら】
授業のふりかえり用紙に、生徒が書いてくれる素朴な疑問。
- 射精するときって、生理みたいに痛みはありますか?
- ナプキンを使うとかゆくなります。もしかして病気ですか?
- 射精とかこわいです。なんとかなくす方法はないですか?
こうした質問にも、いまは自信をもって、科学的にそしてエビデンスに基づいて答えられるようになりました。もちろん、回答を返す前に、教科担や担任の先生にもチェックをしてもらいます!
🥂コミュニティの仲間と学ぶ
2020年頃、性教育を学びたい欲が過熱してリサーチしまくってたときに見つけたのが「性教育コミュニティkokorocolor」でした。
セミナーという会場に集まって学ぶしか方法はないと思っていた私に、光明が差したような出会い。ちょっとした疑問をLINEで聞けたり、日々性教育に取り組むメンバーの生の声を聞けたり、セミナーとはまた違う、実践的な学びを得られるのが楽しいです。
頑張っているのは自分だけじゃないんだなぁとわかり、頑張る糧をもらえます。これからも、仲間の手を借りながら現場で頑張るぞー!✊
🌈おわりに:「はどめ規定」と「包括的性教育」
日本の性教育には「はどめ規定」があり、授業の中で教員が伝えられることには、どうしても限界があります。
「はどめ規定」とは、1998年に学習指導要領に盛り込まれた、性教育を進める上での制限のようなもの。たとえば、小5理科では「人の受精に至る過程は取り扱わない」、中1の保健体育では「妊娠の経過を取り扱わない」と明記されていることから、「はどめ規定」と呼ばれています。文科省は「性交を教えてはいけないと禁止するものではない」としているらしいですが、現場では、過去にマスコミから叩かれた経験もあり、「実際には糾弾されるのではないか」と、いまも恐れている現状があります。
いま、この「はどめ規定」を撤廃しようという動きが進んでいます。
日本が抱えている性に関する課題や世界で行われている教育について学ぶたび、やはり世界水準である「包括的性教育」が、日本でも受けられるようになってほしいとあらためて感じます。その上で、いま現場でできることを端折らずに、地道に積み上げていくことも忘れたくないと、セミナーを受講しながら考えていました。
- 正しい知識を知れる場所へアクセスできるよう伝えること。
- 外部指導者のちからを借りて、少しでも正しい知識を伝えられるようにすること。
- 子どもが「聞いてほしい」と思ったときに、保健室が受け皿として機能できるようにすること。
「できない」と嘆くだけで終わらせず、日々の子どもたちとのかかわりも含めて、常に学び、自分をブラッシュアップさせて、できることを足元から着実に進めたいと感じた、有意義な一日なのでした。
<グループに参加しています!>

ちなみにうちの猫さまは、定期受診日だったので病院へ行ってきました。シクロキャップ(免疫抑制剤)を再開したおかげか、かゆみが治まって皮膚も回復。咳もとりあえず現状維持。保護服のストレスから早く解放してあげたいので、飲み薬もがんばっていきましょうね。

