
こんにちは。具です。
ふだん私は、学校で養護教諭として働いています。
保健室ーーだれかがケガをしてやってくる。ときには、理由もなく保健室に座って話をするだけの子もいる。
そんな教室を超えた小さな場所で、教科書にも会議の議事録にも残らない、先生だけが知っている物語を、今日は私の大切な人との夜の会話を交えておすそ分けします。
なお、ここでお話しする内容は、実際にあったできごとをもとに、フィクションを織り交ぜています。子どもたちとの大切な時間を守るためにも、どうぞその点をご理解ください。
- 🏫エピソード0:情報交換
- 🏫エピソード1: 昼休みの小さなお騒がせ
- 🏫エピソード2: 「先生、保健室の先生みたい」
- 🏫エピソード3:圧迫面接?
- 🏫エピソード4:誤解が解けた日
- 🌈おわりに:家で語る仕事のエピソードがなによりの癒し
たとえば、帰宅後の我が家は、こんな話題から始まります。
🏫エピソード0:情報交換
私たちが帰宅して最初にするのは、お互いの本日の感染症情報交換。
うち、今日コロナで学級閉鎖になった
そうなんだ。ウチもインフルエンザ増えてきた
インフルかー、つらいよね。コロナに隠れて溶連菌も出るし
わかる。こっちは嘔吐が多いよ
そうなんだ、ノロも流行ってるのかなぁ
注意しないとね
まるで同じ職場で働いている同僚みたいに、学校と園で流行っている病気を報告し合います。どこで病気をもらってくるか分からないからこそ、自分たちが感染源にならないように。帰宅して最初に交わす会話が、こんなに実務的なのもわたしたちらしいかもしれません。
🏫エピソード1: 昼休みの小さなお騒がせ
ある日の昼休み。チャイムが鳴ると同時に、保健室のドアを開けて入ってきた生徒がいました。
先生!頭痛いので、保健室でちょっと休んでもいいですか!?!
割と元気そうだが…?と言いたくなる気持ちをおさえて、「どうしたの?」と声をかけます。すると、その子は保健室へ入って2歩ほど進んだところで、
あれ?治ったかも!
えっ?
教室戻ってもいいですか!?
ど、どうぞ!?
閉まるとびら。静まる保健室。何がどうなったのか分からず唖然としてしまいました。そして昼休みが終わるチャイムが鳴る頃、その子がまたひょっこり顔を出して言いました。
先生治りました!ありがとうございました!
たった数分のできごとでしたが、その子の元気そうな姿を見て、なんだかこちらも救われた気がしました。
…ってことがあってね
なんだったんだろうね笑 でも、元気になってよかったね
元気がなによりだけど、本当、なんだったんだろう笑

🏫エピソード2: 「先生、保健室の先生みたい」
これも、今は昔の昼休みのできごと。生徒Aさんと、保健室でいつものようにたわいもない話をしていたとき、生徒Bさんが元気に駆け込んできました。
先生すみません、絆創膏くださいっ
そう言って差し出してきた手には、小さなすり傷。
どの大きさがいい?これは普通サイズで、こっちは大きめ。あ、これは指先用ね
ポケットに常備しているジップロックに入っている絆創膏を広げながら説明をしていると、横にいたAさんがぽつり。
……なんか先生、保健室の先生みたい
すごく真顔で言うから、一瞬なにを言ってるのかと思いました。
いや私、保健室の先生だからね!?
爆笑する二人。普段は生徒にとって“先生”ってだけで、何の先生なのか、どんな役割なのか、あまり意識されないのかもしれません。でも、こうして「保健室の先生みたい」と言われると、ああ、私、ちゃんとこの場所で必要とされてるんだなって、なんだかうれしくなるのです。
まぁ、あんまり保健室の先生に見えないしね、君
なんでよ!こんなに立派に保健室の先生なのに!
そうなんだけどねぇ〜、なんかねぇ〜笑
ひどい

🏫エピソード3:圧迫面接?
これは、ある冬のお話し―受験が迫る3学期。はじめての受験に、気持ちがソワソワする季節です。
ある日ーー
先生、面接の練習してください!
と、委員会でかかわりの多かった生徒数人が、保健室へ集まってきました。
え?いつも学年の先生がしてくれてるじゃん。なんで??
いいからいいから!
先生で練習したいんです!
「なんでよ?」と理由を聞いても、生徒は教えてくれないまま。生徒たちの熱量に押され、私は何度か、「志望理由は?」とか「高校で頑張りたいことは?」と保健室で面接の練習をしました。
結局、なんで私と面接練習するのかという理由はわからないまま、生徒たちは受験を迎えていきました。
合学発表の日ーーいっしょに面接練習をした生徒が、保健室へ次々に合格を報告しにきてくれました。
合格おめでとう!よくがんばったね!!
はい!りゅう先生の圧迫面接のおかげで本番余裕でした!
面接官怖くなかったです、ありがとうございました!
………
いやいやいやいや!圧迫面接なんてしてないよ!?
私はどうも、第一印象は怖いとか、とっつきにくい人に見られがち。面接という固い場面で、生来の姿が出てしまった??
わかるー!君、真面目モードのとき怖いもん。
いや、真面目にやってるんだけだよ!!
子どもはよくわかってるね!いやーいいところに目をつけたよ。
…まあ、でも、私との面接で力が発揮できたというのであれば、結果オーライってことで

🏫エピソード4:誤解が解けた日
ある日、普段はめったに来室しない男子生徒が、少しばかり足を引きずりながら来室。
先生、湿布ください
他の保健室はわかりませんが、私は基本、保健室に湿布を置いていません。喘息の誘発や皮膚のかぶれのリスクを考えて、あえて置いていないのです。
湿布には冷却効果はないし、応急処置には氷のうや保冷剤を利用しています。それに、患部をみて問診した限り、そもそも処置は必要なさそう。
体には自然治癒力が備わっているから、まずは経過を見てみて
そう説明すると、彼は少し不満そうな顔をして、「はい」とだけ言って出ていきました。「ちゃんと伝わったかな」と少し心配していたのですが、翌日、その子がまたふらっと顔を出しました。
先生
こんにちは。ケガの具合はどう?
…俺、先生のこと誤解してたわ
開口一番のその言葉に、思わず「急にどうした?」と笑ってしまいました
湿布貼らんでも治るって、ほんとだった。あのときは先生のこと、ただの元ヤンかと思ってたけど…ちゃんと保健室の先生だったわ
いや、元ヤンじゃないし
これにはツッコまずにはいられませんでしたが、それでも、ほんの少しの誤解が解けて、「保健室の先生」として信頼してもらえたのかなと思うと、少しうれしかった出来事です。
まぁ確かに、元ヤンではないね
私はただのバンギャです
🌈おわりに:家で語る仕事のエピソードがなによりの癒し
そんな日々のエピソードを、我が家は夜、夕飯を食べながら語り合うのが日課です。
保健室って、薬よりなにより先生の顔が効くんだねぇ。かわいいねぇ
そうね、子どもはかわいいよ。逆にこっちが元気をもらうもん
ウチも園でさー、こんなことがあってね…
え?なになに??
なんとなく習慣になった、この「仕事であったちょっとした一コマ」をパートナーと共有できる時間が、最近は私の癒しになっています。
保健室は小さな場所です。でも、そこにくる生徒の数だけ小さなドラマがあって、そのひとつひとつに立ち会えるのが、この仕事の魅力だと思います。
「お疲れさま」や「大丈夫だった?」と、だれかに迎えられる帰り道があるからこそ、小さな物語を、胸の奥で大切にしていられるのかもしれません。
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ちなみにうちの猫さまは、帰宅するとやたらしゃべります。「今日、エアコン寒かったよ」「ゴハンがないんだけど」「いっぱい寝たよ」きっと、猫さまも、私に聞いてほしい一コマがあるのかもしれません。また明日も、誰かのちょっとした物語に出会えますように。